GMTSARで2.5次元解析(計算式について)
** 「この記事に使用したデータは、JAXAの無償公開データを利用しました。」 **
(参考)
「だいち2号」による令和6年能登半島地震の観測結果についてと 「だいち2号」観測データの解析による令和6年能登半島地震に伴う地殻変動(2024年1月19日更新)には 「 2.5次元解析」の図がでてきます。
ここオプション2:斜面変状の移動量の更なる定量化を行うによると、
衛星に近づく/遠ざかる距離Dは、地表の移動量を東方向をdE、北方向をdN、上方向をdUとすると、ALOS/PALSARの場合、最も観測が行われているオフナディア角34.3度の場合に
- 南行観測の場合:D=-0.62dE+0.1dN-0.78dU
- 北行観測の場合:D=0.62dE+0.1dN-0.78dU
- 2つの式の差分をとると、D(北行)-D(南行)=1.24dE
- 和をとると、D(北行)+D(南行)=0.2dN-1.56dU
* 実際には、オフナディア角が南行と北行で一致するとは限らないし、衛星もこんなに都合のいい進行方向はとりません。
とあるけど、dEの係数、dNの係数、dUの係数の求め方については書いてありません。で、求めてみました。
計算式について
極座標への変換についてもう少し詳しく教えてほしいの極座標⇔直角座標の変換によると、
x = r sin θ ・cos φ
y = r sin θ ・sin φ
z = r cos θ
ここでの極角(天頂角)は以下で言う入射角のことだと考えることができる。
ここでの方位角(φ)の定義は、x軸(東)から反時計回りにはかっているが、alosでのシーン中心におけるビーム中心方向(a)はy軸(北)から時計回りにはかっている。(a=π/2-φ が成り立つ)
(参考)三角関数の基本的性質
- cos a=cos(π/2-φ)=sin φ
- sin a=sin(π/2-φ)=cos φ
上下については、衛星に近づく方向がマイナスなので、-cos θ となる。
よって、θを入射角、aをシーン中心におけるビーム中心方向とすると、
- dEの係数: sin θ ・sin a
- dNの係数: sin θ ・cos a
- dUの係数: -cos θ
計算する
- ALOS/PALSARの場合、視線方向は進行方向の右90度
- ALOS/PALSARの場合、オフナディア角34.3度で入射角は約38.7度になる。
- 衛星の進行方向は、(計算した上で係数がほぼ一致した)北行の場合は進行方向の方位角を-10度、南行の場合は進行方向の方位角を190度とした。
南行の場合
進行方向の方位角を190度とすると、視線方向は、190+90=280度。オフナディア角34.3度の場合、入射角は38.7度。
sin(38.7*pi/180)*sin(280*pi/180)
sin(38.7*pi/180)*cos(280*pi/180)
-cos(38.7*pi/180)
#[1] -0.6157438
#[1] 0.1085722
#[1] -0.7804304
D=-0.62dE+0.11dN-0.78dU
北行の場合
進行方向の方位角を-10度とすると、視線方向は、-10+90=80度。オフナディア角34.3度の場合、入射角は38.7度。
sin(38.7*pi/180)*sin(80*pi/180)
sin(38.7*pi/180)*cos(80*pi/180)
-cos(38.7*pi/180)
#[1] 0.6157438
#[1] 0.1085722
#[1] -0.7804304
D=0.62dE+0.11dN-0.78dU
南行、北行とも、国土地理院の記事とほぼ一致した。
ALOS2/PALSAR2 の実データで計算してみる
陸域観測技術衛星 2 号(ALOS-2)PALSAR-2 レベル 1.1/1.5/2.1/3.1 プロダクトフォーマット説明書(CEOS SAR フォーマット)
SAR リーダ(LEDから始まるファイル)
(プロダクトフォーマット説明書のP.31) ファイルディスクリプタ : レコード長(byte) 720 <--- ここは読み飛ばす
SAR リーダファイルから計算に必要な数値をとりだして、計算すると、(Rを使わなくても取り出せる)
2024/01/02 2830
ALOS2/PALSAR2は、進行方向の左90度を観測できる。(ALOS/PALSARは右90度のみ)
# センサプラットフォームの飛行方向に対するセンサアングル
dd if=LED-ALOS2518982830-240102-UBSL1.1__D ibs=1 skip=1197 count=8 2>/dev/null
# -90.000
# (注意) awkの場合、 piは、atan2(0,-0)
# 入射角
incidence_angle=$(dd if=LED-ALOS2518982830-240102-UBSL1.1__D ibs=1 skip=1205 count=8 2>/dev/null)
# シーン中心におけるビーム中心方向
look=$(dd if=LED-ALOS2518982830-240102-UBSL1.1__D ibs=1 skip=2534 count=16 2>/dev/null)
# pi=atan2(0,-0)
EW=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" -v "look=$look" '{print sin(ia*atan2(0,-0)/180)*sin(look*atan2(0,-0)/180)}' )
NS=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" -v "look=$look" '{print sin(ia*atan2(0,-0)/180)*cos(look*atan2(0,-0)/180)}' )
UD=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" '{print -cos(ia*atan2(0,-0)/180)}' )
#
echo $incidence_angle $look $EW $NS $UD
# 39.678 106.1804862 0.613182 -0.177919 -0.769645
入射角: 39.678度、シーン中心におけるビーム中心方向:106.1804862度
D1 = 0.613182 dE -0.177919 dN -0.769645 dU
2024/01/01 0770
# センサプラットフォームの飛行方向に対するセンサアングル
dd if=LED-ALOS2518900770-240101-UBSL1.1__A ibs=1 skip=1197 count=8 2>/dev/null
# -90.000
# 入射角
incidence_angle=$(dd if=LED-ALOS2518900770-240101-UBSL1.1__A ibs=1 skip=1205 count=8 2>/dev/null)
# シーン中心におけるビーム中心方向
look=$(dd if=LED-ALOS2518900770-240101-UBSL1.1__A ibs=1 skip=2534 count=16 2>/dev/null)
# pi=atan2(0,-0)
EW=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" -v "look=$look" '{print sin(ia*atan2(0,-0)/180)*sin(look*atan2(0,-0)/180)}' )
NS=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" -v "look=$look" '{print sin(ia*atan2(0,-0)/180)*cos(look*atan2(0,-0)/180)}' )
UD=$(echo| awk -v "ia=$incidence_angle" '{print -cos(ia*atan2(0,-0)/180)}' )
#
echo $incidence_angle $look $EW $NS $UD
# 32.411 -105.4931072 -0.516512 -0.143175 -0.844225
入射角: 32.411度、シーン中心におけるビーム中心方向:-105.4931072度
D2 = -0.516512 dE -0.143175 dN -0.844225 dU
* 単純に足したり、引いたりしただけではダメ。
準上下方向
D1/0.613182 + D2/0.516512
= (0.613182 dE -0.177919 dN -0.769645 dU)/0.613182 + (-0.516512 dE -0.143175 dN -0.844225 dU)/0.516512
= (-0.177919/0.613182 - 0.143175/0.516512 ) dN + (-0.769645/0.613182 -0.844225/0.516512) dU
= -0.5673528 dN -2.889639 dU
dU + 0.1963404 dN = -(D1/0.613182 + D2/0.516512)/2.889639
準東西方向
D1/0.769645 - D2/0.844225
= (0.613182 dE -0.177919 dN -0.769645 dU)/0.769645 + (0.516512 dE +0.143175 dN +0.844225 dU)/0.844225
= (0.613182/0.769645 + 0.516512/0.844225) dE + (-0.177919/0.769645 + 0.143175/0.844225 ) dN
= 1.408526 dE - 0.0615768 dN
dE - 0.04371719 dN = (D1/0.769645 - D2/0.844225)/1.408526